巡礼(じゅんれい)は、聖地を巡るという宗教的行為のことを指す。しかし、小説・映画・ドラマ・アニメの舞台やロケ地を聖地と見なし、それらを訪問する事を巡礼(聖地巡礼)と称する事もある。ここでは、前者の宗教的観点からの巡礼を述べる。
本来、巡禮とは日本における各地の神社、寺院を訪ね巡り礼拝することである。明治以降各宗教の聖地へ行く事をこの言葉に翻訳した。
一般に、キリスト教やイスラム教に見られる一つの聖地だけに巡礼する直線型と、インドや東洋で見られる複数の聖地を巡る回国型に分類される。
巡礼と同じような意味の言葉に巡拝(じゅんぱい)がある。巡礼は宗教色が強く、巡拝はどちらかと言えば観光や娯楽の意味合いが強いとされるが、明確な区別はない。
キリスト教は、当初から殉教者を出したが、その墓所に詣でて敬意を表する信者がいた。これをマルティリウムといい、礼拝の場である教会と並び、キリスト教コミュニティの重要な中心となった。
4世紀にキリスト教が公認されると、キリスト教発祥の地であるパレスチナ、ことにキリストの生地であるベツレヘム、受難の地であるエルサレムへ、その遺構に参拝する信者が旅行するようになった。また各地の殉教者記念堂も巡礼の対象となった。
キリスト教における巡礼は聖地への礼拝だけでなく、巡礼旅の過程も重要視されている。すなわち聖地への旅の過程において、人々は神との繋がりを再認識し信仰を強化するのである。
地中海沿岸からヨーロッパ各地に諸聖人の遺骨(聖遺物または不朽体)または十字架、ノアの箱舟の跡などの遺物を祭ったとされる教会、聖堂などが多数あり、そのような地への巡礼が行われた。巡礼は多くの旅行者を集めた(『カンタベリー物語』など。)。もっとも有名なものには、エレナが発見したとされる十字架の遺物、アルメニア王アブガルス3世に贈られ、エデッサからコンスタンティノポリスにもたらされたマンドリオン('手で描かれたのではない聖像')、コンスタンティノポリスの聖母マリアの衣、洗礼者ヨハネの首などがある。これらの宝物は中世後期に失われた。また、巡礼者を惹きつけるために他の教会から聖遺物を盗んできたり、偽造するということもあったとされる。また西方では、中世中期からミラノのキリストの聖骸布、聖杯(聖杯伝説や騎士道物語を生み出す元になった)などの伝承が生まれた。
古代後期から、殉教者の遺骨によって奇跡がおき、参拝した巡礼者に病気が治癒したりや歩けなかった足 動くようになったなどの事例が報告されるようになった。こうした奇跡が起こったということから巡礼者が集まるようになったというものも多い。スペインとフランスの国境、ピレネー山中のルルドや、ローマ、エルサレムと並ぶ西方キリスト教(カトリック)の三大巡礼地の1つ北スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ(ここへの巡礼の物語を時間と空間を越える神の存在への問いかけの物語にしたフランス映画で「銀河」がある)など。例えば、ライ麦につく麦角菌に起因する麦角病(四肢が壊疽したり、精神錯乱を招く)は巡礼に赴くことで癒えるとされた。巡礼中の断食により、汚染したライ麦を食べなくなったためであったという。このように「奇跡」とされるものには、科学的に説明がつく例もある。
こうした巡礼の旅で病に倒れた人、宿を求める人を宿泊させた巡礼教会、その小さなものをHospice(終末期の患者が残りの時を過ごす近代的なホスピスの語源)と呼んだが、そこでのもてなしから「歓待」(Hospitality)の語がうまれ、病人の看護などの仕事をする部門が教会の中に作られるようになって今日の英語でいう「病院」(Hospital)が派生した。ゆえに、Hospitalは、病院だけではなく、老人ホーム、孤児院の意味も持つ。
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